アーティストの素顔 vol.6

このコンサート
を、
聴いてください。

今、クラシック音楽を礎に、ポップス、ミュージカル、ジャズ、舞台など、様々な音楽シーンに飛躍の場を広げているアーティストが台頭しています。

八ヶ岳高原音楽堂でも、そのような未来への可能性を持ったアーティストに期待を込め、その活動を応援していきたいと思います。

今回は、その中でも一際輝くアーティストの一人 「田代万里生さん」(歌手・俳優)を、ご紹介します。

コンサート担当

田代万里生とは。

容姿端麗。長身。颯爽とした出で立ち。  
その声は輝かしいテノール。美しい高音に、エモーショナルな表現力も併せ持つ。
もしかしたら、純クラシックを好む方には、まだ聴き馴染みのないアーティストかもしれない。
でも一度聴くと脳裏にやき付くアーティスト。また聴きたくなるアーティスト。 それが、田代万里生である。  

彼はミュージカルで主に活躍しているが、その歌唱力・音楽性は純・クラシックを礎にした抜群の安定感を感じる。それもそのはず、お父上はオペラ歌手・田代誠氏、お母様もピアノ講師をされていた音楽一家に生まれ、小さい頃から音楽に囲まれていた。13歳のときに、ボーイソプラノとしてオペラの舞台を踏み、声楽を志し東京藝術大学声楽科入学。在学中の18歳のときにオペラ初舞台を踏む。
豊かな才能と環境に恵まれた、まさにサラブレッドである。
当然、熱烈なファンの方も多い。

昨年はじめて、八ヶ岳高原音楽堂での公演が実現した。満員御礼であった。
公演の内容は非常にユニーク。名づけて「モーツァルト×2 コンサート」。
ミュージカルのコンサートでもなければ、クラシックのテノールリサイタルでもない。
モーツァルトの一生を音楽評論家・真嶋雄大氏が台本にし、生涯のストーリーに合わせて、語りやピアノや歌の名曲が登場する。演劇的な要素もある。しかも内容は、教科書的な歴史ではなく、思わず笑ってしまうエピソードなど、アカデミックな内容をエンターテインメントとして魅せてくれるコンサート。
クラシックの基礎をしっかりと勉強し、そしてミュージカルという飛躍の場を得た田代にとっては、当然のジャンルのコンサートだったのかもしれない。

田代万里生の何がすごいのか。

ところで、現場で間近にて接する機会を頂く中で、田代万里生の印象がガラリと変わった。 前段で述べたようなスター的な要素はもちろんあるものの、田代万里生の本質は、いわゆる〝表面的な部分“に留まらないことを強く感じた。
このコンサートは、真嶋雄大氏の台本に、その生涯のストーリーに寄り添うように音楽が挿入された〝オリジナル”作品であるわけだが、田代は決して指定されたことを受身で歌うわけではない。
それどころか、共に台本を吟味し、曲を造りこむ。そして、本番直前まで本当にそれがベストか自ら考える。真嶋氏とのディスカッションの会話からは、田代がその作曲家を演じるにあたり、いかに勉強しているかが、ありありと窺えた。ディスカッションも自分の意見を押し通すのではなく、現場全体の雰囲気や流れを感じ、適切な言葉を選び、スタッフ・共演者とも抜群のコミュニケーションをはかる。
そして何より印象的だったのは、これから始まる舞台に対するきらきらした眼差しである。
音楽と対峙し、なお楽しむ。舞台裏で仕事をしているとわかるのだが、すべての演者が完璧に実現できるコンディションではない。これは観客に対する深い敬意でもあるのだろう。
まさに、音楽に対する真摯な姿勢と、深い洞察力・人間性が卓越したアーティストである。

今回の聴きどころ。

今年も待望の公演が6/30(土)、7/1(日)に実現する。連夜である。
演目は昨年のモーツァルトに続いて、「シューベルト×2」と「ショパン×2」。
今回の聴きどころは、何といっても、誰もが知る名曲を田代自身が訳して歌うということだ。
例えばシューベルトの〝野ばら”。
「古くから知られる、近藤朔風作の『わらべはみたり 野なかのばら・・・』は意訳なんです。直訳は違っていて、とても面白い。それに即して訳すことで、3番まであえて歌う意味も見えてくる。こんな聴き方もあるんだ・・・ と思ってもらえるような、もう一つのアプローチをしてみたい」。
音楽と観客と真摯に向き合うその眼差しに、期待が高まる。


CONCERT INFOMATION

田代万里生×佐藤彦大 

■6月30日(土)シューベルト×2 ■7月1日(日)ショパン×2

■15:30開場/16:30開演 ■料金9,200円 

■プログラム:
<6/30>鱒、魔王、菩提樹~歌曲集「冬の旅」他
<7/1>革命のエチュード、英雄ポロネーズ他

コンサート詳細はこちら


お問い合わせ:八ヶ岳高原ロッジ 電話:0267-98-2131