能楽「羽衣」より~序の舞
「いや疑いは人間にあり、天に偽りなきものを。」― 人間の心を動かした天女のメッセージ

春の朝、三保の松原に住む漁師・白龍は、仲間と釣りに出た折に、松の枝に掛かった美しい衣を見つけます。家宝にするため持ち帰ろうとした白龍に、天女が現れて声をかけ、その羽衣を返して欲しいと頼みます。白龍(はくりょう)は、はじめ聞き入れず返そうとしませんでしたが、「それがないと、天に帰れない。」と悲しむ天女の姿に心を動かされ、天女の舞を見せてもらう代わりに、衣を返すことにします。

羽衣を着た天女は、月宮の様子を表す舞いを舞い、さらには春の三保の松原を賛美する舞いを舞うと、やがて彼方の富士山へ舞い上がり、霞にまぎれて消えていきました。

今回は天女の舞を中心にご覧下さい。

「船弁慶」より早笛(はやふえ)舞働(まいばたらき)
義経、弁慶、静御前、平家物語のスターが登場する一大ドラマ

平家追討に功績をあげた源義経でしたが、頼朝に疑惑を持たれ追われる身となります。義経は、弁慶ら忠実な従者を伴い西国へ逃れようと、摂津の国大物の浦へ到着します。同行していた義経の愛妾、静(しずか)は、女の身で困難な道のりを進むことは難しく都に戻ることになりました。別れの宴の席で、静は舞を舞い涙にくれて義経を見送ります。出発をためらう義経に、弁慶は強引に船出を命じます。すると、船が海上に出るや否や、突然暴風に見舞われ、波の上に、壇ノ浦で滅亡した平家一門の亡霊が姿を現しました。なかでも総大将であった平知盛(とももり)の怨霊は、義経を海底に沈めようと、刀を振りかざして襲いかかります。弁慶は、必死に五大尊明王に祈祷し、ついに怨霊は消え去りました。本プログラムでは能「船弁慶」の中から、平知盛が幽霊となって現れる後半の劇的な場面を、お囃子でお届けします。

「田楽幻想」
現代に蘇る世阿弥以前の音世界

田楽は、室町以前に人々が田植の時期に田の神様を祭り、歌い舞ったのがその源流と言われています。

鎌倉から室町時代に大流行し、専業の田楽法師も出現しました。鼓(つづみ)、笛、太鼓、ささらを奏しながら舞う田楽踊りや曲芸や能も演じられました。そして後世にこの田楽が猿楽、そして能へと発展しました。時代とともに田楽は消滅しましたが、現在もその要素は能の音楽の中に聞くことができます。

一噌幸弘は、古い資料を元に研究を重ね、田楽の音を再構築しました。古の人々が田楽に合わせて踊り歌う光景に思いを馳せて聞いて頂きたい曲です。


◆家族で楽しむ新春「能楽」公演
2019年1月2日(水)
午後1時00分 開場/午後1時30分 開演
詳細はこちら


お問い合わせ:八ヶ岳高原ロッジ 電話:0267-98-2131