なぜか、自然ワインの第一人者、岡本英史さんに、椅子について聞く。
ワインづくりの専門家、岡本さんに椅子についてお聞きする?!
実は、岡本さんなくして、この椅子は誕生しませんでした。音楽堂に対する岡本さんの想い、そして皆川明さんとたためる椅子を、どのような思いで繋げていただいたのか・・・。
岡本さんにお聞きしました。
文:岡本英史(ボーペイサージュ)
音楽堂との出会いは、一番最初に八ヶ岳高原ロッジさんが、主催の八ヶ岳高原音楽堂のサロンコンサートにおいて地元で造られているワインを提供できないかと声をかけていただいたのがきっかけです。その時の打ち合わせで初めて音楽堂に出会いました。ぼくはその日39℃くらいの熱がありお天気もよくなかったのですが音楽堂は言葉ではうまく言えませんが力を宿しているように感じました。
自然の中に溶け込んでいながら存在を感じるような。
近くに20年も住んでいましたがその時初めて来て感じることができました。ぼくは特に建築やデザインに関心があるわけではなく、その時まで「吉村順三」さんのことも知りませんでした。そんな自分でもそこが特別な場所だとすぐに理解できました。
そしてこのような素晴らしいものをもっと多くの人に知ってもらいたい。前の世代の方が遺してくれたものをいま生きている人間として活かしていきたいという使命感のようなものを感じました。それはぼくがそういう人間というよりも音楽堂の力がそう思わせるのだと思います。
おおらかさというか包容力があり誰でも受け入れてくれるような感覚。
まさに自然のそのもののような身体になじむ感覚。
この感覚はワインでも一番大事だと感じていることでもあります。
その後、カルロス・アギーレさんのコンサート(※注:2018年1月11日開催)をやらせていただいた折に「たためる椅子」も30周年を迎えるにあたり何かしたいと考えているというお話をお聞きしてすぐにその少し前にBEAUPAYSAGEにいらしていただいた皆川さん(注:皆川明氏。ミナ ペルホネン デザイナー)の布の話を思い出しました。
皆川さんはもともとぼくの大好きなお店である祐天寺のmargoさんによく行かれていたというご縁でmargoの小島さんご夫婦と一緒にBEAU PAYSAGEにいらしていただきました。
ぼくはもともと服にもデザインにも無頓着な人間で失礼ながらその時まで皆川さんのこともミナ ペルホネンのこともよくは知りませんでした。
そしてその夜、小島さんのお料理とワインと共に星空の下、ろうそくの灯りでいろいろなお話をしました。皆川さんはとても魅力的ですぐに人として大好きになってしまいました。
その夜のお話の中で何十年も座っていてすり減ってきて初めて次の新しい模様が出てくるという布を(ある業者さんと共に)開発されたという話をしてくださいました。
木は年月を重ねるにつれ風合いがましていくのに対して布は劣化していってしまう。 このことがずっと気になっていてそれをなんとかしたかったというところから使い続けるうちに新しい魅力がでてくる布を開発したという考え方の方向にはっとさせられました。
普通なら劣化するものがあれば劣化しないようにと考えると思うのです。
変化はするものとして受け入れてそれならばいい変化が起こるようにしようという考え方の方向がお聞きしていてとても心地よく心に響きました。
ぶどうもワインも人間も自然界のものすべては変化し続けています。ぶどうは成長し、ワインは酸化していき、人間もまた成長しそして老化していきます。ワインであればこれを悪いものだと考えると酸化防止剤を添加して簡単に止めることができます。しかし同時に他の何かを失います。そもそも変化は悪いものなのだろうか?どんな変化もいいという訳ではないと思いますが変化して新たな魅力が出てくるような力のあるぶどうをつくろうと考えるようになりました。そして人としての自分も。ワイン造りを通して自分が感じていたことにもおこがましいようですがつながるように感じました。
そんな使い続けて30年後に出てくる新しい魅力が待ち遠しくなるような皆川さんのその布を30年間ほとんど変わらないデザインの「たためる椅子」を組み合わせたらそれはとても面白いと直感しました。と同時にこの作品が宿している深いメッセージは毎日この椅子に座る人はもちろん目にする人にも身体を通して伝わっていくと確信しました。
今回、この歴史に残る素晴らしいコラボレーションに立ち会うことができて心から幸せだと感じています。
ストーリー | |
---|---|
2019/04/01 | ミナ ペルホネン 皆川明さんと吉村順三 |
2019/04/01 | たためる椅子誕生の秘話 |
2019/05/10 | コラボバージョンは、吉野杉でつくりました。 |
2019/06/06 | ミナ ペルホネンの生地“dop”はどんな生地? |
2019/06/05 | なぜか、自然ワインの第一人者、 岡本英史さんに椅子について聞く。 |
2019/05/10 | たためる椅子のある風景 |
2019/06/06 | お手入れ |